一寸の喪女にも五分の愛嬌を
「宗いっ!!」

「あれから誰とも付き合わずにずっと僕を想ってくれていたのに。ごめん、僕の目は曇っていた……。僕だって君を嫌いになって別れたんじゃないんだ。これから綾乃には内緒で二人で会ってもいい。それで薫の想いに応えられるなら、僕は君と会いたい」

 久しぶりの宗一郎の腕の中。彼の鼓動が耳の奥に響く。

 また雨に打たれて冷えた体が、急に温もりを与えられて驚いている。

 硬直していた私だったが、すぐに我に返り盛大に叫んだ。


「ふっざけんな、ド阿呆!!!」


 突き飛ばす勢いで宗一郎の胸を押しやり、私は彼を睨み上げる。

 血がのぼるとはこのことだ。

 体の中が沸騰しそうなほど血が沸き立っている。

「あんたの頭の中に詰まっているのはウニですか!? いや、ウニの方がずっとましだよね、美味しいし! 僕の目が曇っていた? 腐っていたの間違いでしょ。綾乃には内緒で会う? どこまで性根が腐ってんのよ! あんたは外道どころか産業廃棄物以下のクズだわ。あんたを待っていたわけないでしょう!? 二度と私の前に現れないで! それに結婚式のご招待とか、頭イカレてるでしょ?」

 呆然と突っ立ている宗一郎に向けて、冷たい口調で言い放つ。


「全てお断りします。徹底的に接触禁止! 二度と来るな、ボケ!」
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