一寸の喪女にも五分の愛嬌を

「ぎゃああああ! 終わったぁぁぁ!!!」


 唐突に叫んだ私に驚いたのか、成瀬が駆け寄り私の肩を抱いた。

「せ、先輩、どうしたんですか!?」

 心配しているとはわかっている。けれど今の私は絶望の縁にいる。
 だから叫んでも仕方ないよね、と自分を肯定しながら、思い切り叫んだ。

「おまえのせいだろうが!! イベントコンプできなかっただろう! どうしてくれんのよ、これ! 社会人にもなって人に迷惑かけてんじゃないよ!」

「ちょ、え? 先輩?」

 成瀬は呆然と私の肩を抱いたままフリーズしている。


 まあ、そうなるだろうな、と理解する。

 優しいと思っていた人が、豹変したのだ。しかも相手は理由もわからないのに、おまえのせいだなんて罵られ、驚かない方が不思議だ。

 わなわなとわき上がる怒りを押し込め、ポイッとスマホをベッドに投げ、私はガックリと肩を落とした。

「ごめん、八つ当たりだ。大人げない」

「いえ……俺、なんか迷惑かけて……すみません」

「うん……すっごい迷惑はかけてる。あんたが一緒にタクシーに乗らなかったら……イベントが……イベントが……」

 わあ、と泣きはしないが、思わず枕に突っ伏して倒れ込んだ。

 そんな私の隣に腰を下ろした成瀬が、そっと頭をなでる。

 幼子を慰めるように、優しく触れてくる手に私は本気で泣きたくなってしまった。
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