一寸の喪女にも五分の愛嬌を
翌朝、目を覚ました途端に、失敗したことに気がついた。
「しまった……」
呟いた喉がひどく痛む。
宗一郎と話をして逃げるように部屋に駆け込み、そのままベッドで眠ってしまった私は、濡れたまま掛布団も被らずに眠っていた。
おかげでどうやら風邪を引いてしまったようだ。
体は熱っぽくて頭痛もある。それに致命的なほど喉の痛み。
「薬、あったかな」
急いで薬を探し出しパッケージを見て「うわぁ」と思わず嘆息する。
既に使用期限が二年前に切れている。
「ちょっと二年前の薬って、捨てておけよ、自分。というか、どんだけ病気知らずなのよ。自分で驚くわ」
そういえばずっと病気知らずで、少し調子が悪い時はとにかく酒を飲んで眠っていれば大抵は直ってしまっていた。
この際、期限なんて気にせずに飲んでしまおうかとの考えがチラリと過ぎったが、さすがに二年ものは諦めた。
薬は駅前のドラッグストアで買えばいいかと急いでシャワーを浴びて身支度を調える。
稲田さんに借りていた服も途中でクリーニングに出すために紙袋に押し込む。
ふらついているけれど、冷たい水を飲み干せばなんとか動けるだけの気力はあったので、いつもより低いヒールの靴を選んで部屋を出た。