一寸の喪女にも五分の愛嬌を
「先輩……俺で相談に乗れるなら、話してください」

「…………るな」

「え? なんですか?」

 ゆっくりと私へと顔を寄せた成瀬に、顔を起こすなり言った。

「気安く触るな! あ~、もうムカつく! ああああ! やってらんない!」

 ビックリした猫が目を見開いて動きを止めた時のように硬直している成瀬に、私は大きな溜息を吐いた。

「また八つ当たりしたわ。ごめん、お詫びにビール一本あげるわ」

 のろのろと起き上がり、キッチンへ向かうと、冷蔵庫からビールを二本、戸棚からさきいかと柿の種を運び出し、ドカリと座り込む。

「はあああ、もう酒飲むしかないわ。ほら、成瀬、あんたにこれあげるから、タクシー乗って帰りなさいよ」

 グイと手にしたビールの缶を一本差し出せば、ベッドの上から手だけを伸ばして成瀬は受け取る。

 さきいかと柿の種の袋を開封してローテーブルに置き、プッシュとビールのプルタブを引き上げた。

「先輩、俺も一緒に飲んでもいいですか?」

「ああん?」

 思わずヤンキーのような返事になってしまった。

 けれど成瀬はひるむことなく、いつもの好感度の高い笑顔を見せる。

「なんか落ち込むことあったんですよね? なら一緒に飲みましょうよ。その方が気が晴れますよ」

「いや、ほとんどあんたのせいだからね!」

 思わず叫んでから、八つ当たりの心地悪さに溜息をつく。
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