一寸の喪女にも五分の愛嬌を
頭痛がする。
激しく頭痛がする。
確か二歳しか違わないはずだった。
しかしこの二年で私が思っていた常識は、大きく変わってしまったのだろうか。
男が女の部屋に気軽に泊まるのが普通の認識なのか……理解しがたい。
「あのさ……」
一応私も女なんですけど、と言いかけて、ふと考える。
もしかしてこんな素の姿を見て、成瀬は私をおっさんとして認識しているのかもしれない。
怒鳴るはビールを立て膝であおるは、とどめはつまみにさきいか。
我ながらおっさんチョイスだと思われた。
だからこそ成瀬も私をおっさん認識し、平気で泊まらせろなんて言い出したのかもしれない。
付き合う云々はきっとこいつの軽い社交辞令なのだろう。イタリア人は女性を口説かないのは失礼にあたるらしいから、成瀬もそんな感じで言っただろう。
「あー、まあいいわ。いや、本当はイヤだけど、まあ泊まるくらいはいいわ」
なんだかあれこれと考えるのも面倒になってきた。
頼まれごとを断るのもなかなかにパワーを消費してしまうものだ。だから私はどうでもよくなり軽く承諾した。
その途端、また成瀬が手を伸ばして抱きついてこうよとしたので、思い切りその腕を叩き睨み付けた。