一寸の喪女にも五分の愛嬌を


 頭痛がする。

 激しく頭痛がする。


 確か二歳しか違わないはずだった。

 しかしこの二年で私が思っていた常識は、大きく変わってしまったのだろうか。
 男が女の部屋に気軽に泊まるのが普通の認識なのか……理解しがたい。

「あのさ……」

 一応私も女なんですけど、と言いかけて、ふと考える。

 もしかしてこんな素の姿を見て、成瀬は私をおっさんとして認識しているのかもしれない。

 怒鳴るはビールを立て膝であおるは、とどめはつまみにさきいか。

 我ながらおっさんチョイスだと思われた。
 だからこそ成瀬も私をおっさん認識し、平気で泊まらせろなんて言い出したのかもしれない。

 付き合う云々はきっとこいつの軽い社交辞令なのだろう。イタリア人は女性を口説かないのは失礼にあたるらしいから、成瀬もそんな感じで言っただろう。

「あー、まあいいわ。いや、本当はイヤだけど、まあ泊まるくらいはいいわ」

 なんだかあれこれと考えるのも面倒になってきた。

 頼まれごとを断るのもなかなかにパワーを消費してしまうものだ。だから私はどうでもよくなり軽く承諾した。

 その途端、また成瀬が手を伸ばして抱きついてこうよとしたので、思い切りその腕を叩き睨み付けた。
< 21 / 255 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop