一寸の喪女にも五分の愛嬌を
(側にいられるなんて!!)

 すごく嬉しい!


 福岡に帰らず、側にいられるんだ。

 そう問いかけると、成瀬は私の背中に腕を回してギュッと抱き返してくれた。

「あ~、もう……どうしてこんなに可愛いんですか? 俺を窒息しさせる気でしょ? なにこれ、ツンデレ? それともギャップ萌えってやつ? ああ、可愛いんだから、もう」

 私のどこが可愛いと言うのだろう。成瀬はいつもそういうけれど、理解できない。

 可愛げのない喪女。

 そんな私を可愛い本気で言うのならば、そうさせたのは目の前の成瀬のせいにほかならない。

 私は成瀬に抱きしめられたままでそっと彼の顔を見上げる。
 その瞳には私だけが映っていた。


 ――ああ、どうしよう……。


 好きと言う気持ちが後から後から溢れてきて、成瀬を手放せない。

「そんなに見つめないでくださいよ」

 どこか居心地悪そうに成瀬が眉を下げたから、思わず意地悪に問いかけてしまった。
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