一寸の喪女にも五分の愛嬌を
 課長がすぐに気がついてヒラヒラと手を振り笑う。

「いやあ、二人がいないとまいっちんぐだよ~。柴崎さん、おかえり、おかえり」

 迎えてくれた後、すぐに続けた。

「こっちに戻って来てくれるんだね。有馬取締役にはこっちから言っておくから、柴崎さんは人事課にこれからもいてちょんまげ~」

 脱力してしまいそうな昭和らしきギャグを放つ課長に素直に頭を下げた。

 私を秘書にという話はもう有馬取締役とは話していたのだろう。
 けれど課長は迎え入れてくれることに決めてくれたのだ。

 それにしても、と首を傾げる。

 課長は有馬取締役に直接意見できるほどの影響力を持っているだろうか。

 今、それは些末なこと。

 またこの場所に戻れたことと、成瀬が隣にいてくれることが嬉しくて、私は心からの笑みを浮かべた。


 きっと……会社では初めて浮かべた笑顔かもしれない。 
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