一寸の喪女にも五分の愛嬌を
 これからは仮面のように笑うばかりでなく、本心からの笑顔ができるようになりたい。

 まだまだ知らない自分を、成瀬と一緒にたくさん見つけていこう。
 そうしてたくさんの時を過ごそう。

 隣を見れば、成瀬はすぐに視線に気がつき優しく微笑んでくれる。

 彼のこんな笑みも、会社で見るのはきっと初めてだ。

「改めて……よろしくね、成瀬」

「こちらこそ、よろしくです。薫サン」


 梅雨はもうすぐ明ける。

 私たちも晴れ渡った未来へ歩き出す。


 十年後も二十年後も、ずっと今と同じ笑顔を浮かべていられるよう、お互いによろしくお願いします、春人サン。


 それからすぐにそれぞれのデスクに座り、いつもの一日が始まった。
 
 
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