一寸の喪女にも五分の愛嬌を
え? と驚く成瀬の目の前に手のひらを差し出してペラペラとしゃべる口を止める。
それから私は彼を睨み上げた。
「待ちなさいって。まだ私たちは付き合って数日だよ? いきなり何を言い出すのかと。まずはもっとお互いを知ってから、そういう話をするべきでしょ」
「付き合う日数なんて関係ないよ。俺、最初に結婚してって言ったの覚えてない? あの時は変なラップで返されて大笑いしたけど」
「いやあああ! あれは忘れろって言ったでしょ!! 黒歴史を蒸し返すな!」
あの時、忘れる取引をしたくせに全然忘れてないじゃないか!
きりりと目尻がつり上がった私に気がついたのか、成瀬は必死に笑いを押し殺す。
けれどすぐに柔らかな眼差しで私を見つめ、いつも以上に甘い声で言った。
「俺はどんな薫さんも大切だから全部覚えていたい。付き合いの長さより大切なのは気持ちだと思う。俺は本当に薫さんが好きで、薫さんだって俺を選んでくれるんでしょ? だったら問題ない。そうでしょう?」
「いや問題は――」
「ない。でしょ?」
きっぱりと成瀬が言うから、思わず私も(問題、ないのかも?)なんてうっかり思ってしまい、コクリと頷いてしまった。
それから私は彼を睨み上げた。
「待ちなさいって。まだ私たちは付き合って数日だよ? いきなり何を言い出すのかと。まずはもっとお互いを知ってから、そういう話をするべきでしょ」
「付き合う日数なんて関係ないよ。俺、最初に結婚してって言ったの覚えてない? あの時は変なラップで返されて大笑いしたけど」
「いやあああ! あれは忘れろって言ったでしょ!! 黒歴史を蒸し返すな!」
あの時、忘れる取引をしたくせに全然忘れてないじゃないか!
きりりと目尻がつり上がった私に気がついたのか、成瀬は必死に笑いを押し殺す。
けれどすぐに柔らかな眼差しで私を見つめ、いつも以上に甘い声で言った。
「俺はどんな薫さんも大切だから全部覚えていたい。付き合いの長さより大切なのは気持ちだと思う。俺は本当に薫さんが好きで、薫さんだって俺を選んでくれるんでしょ? だったら問題ない。そうでしょう?」
「いや問題は――」
「ない。でしょ?」
きっぱりと成瀬が言うから、思わず私も(問題、ないのかも?)なんてうっかり思ってしまい、コクリと頷いてしまった。