一寸の喪女にも五分の愛嬌を
「おはようございますじゃないでしょう! 床で寝なさいって言ったのに、どうしてここにいるのよ!」
「まあ、それは……だって床が固かったから」
はあああ、と深い深い溜息が私の口をついてこぼれる。
「それは覚悟してって言ったでしょう……もう、いいわ」
呆れかえった私は、もう成瀬のことを考えることをやめ、半身を起こし枕元のスマホを手に取った。
「早速ゲームですか? 顔も洗わずに」
いつもより緩やかな口調で問いかけてくる成瀬に、「そうよ」と軽く返事をする。
「朝の日課ね。これが終わってから身支度をすることになってるの」
「ゲームより、俺を構ってくれませんか? せっかく一緒にいるのに」
甘えた様子で私を見つめてフッと笑う。
そんな成瀬に私は小さく首をふる。
「成瀬……あんたにはほとほと呆れるわ。本気で脳の検査でも受けたらどう?」
アプリで会話を進めながら、まだ眠そうに目を閉じようとしている成瀬に視線を流す。
少年のようでもあり、どこか色香を漂わせているアンバランスさは、人目を惹きつけることだろう。
「せっかく一緒ってなによ。私は一人がいいのに勝手に押しかけたんでしょ。それに今のあんたは私にとっては大きなぬいぐるみ程度の認識なの。別にいてもいいけど私の邪魔をしないでね」
ビシッとそれだけ告げ、またスマホへ視線を落とした。