一寸の喪女にも五分の愛嬌を
 海外セレブの彼が今日はパーティーを開くから、新しい靴をガチャでゲットしようと思っているところだ。邪魔はしていただきたくない。

「ねえ先輩、休みだし俺とどっか出かけませんか?」

「お断り。どうして成瀬と一緒に行動しなきゃならないの? 出かけるなら一人で出かけるわ。それより早く帰りなさいよ」

 冷たく言い放つと、成瀬は口元を引き上げて笑い、ごろりと寝返りをうち半身を起こす。

「本当にクールですね。でもそれがまたいい感じで……」

 言いながら私の肩に手を伸ばしてきたので、ぴしゃりと叩き落とす。

「触るなって言ったでしょう? もう忘れたの? それとも本格的に脳の病気? 病気なら同情するわ。ご愁傷様」

「遺族っぽい挨拶されてしまいましたけど」

「だって脳が壊死してるんでしょう? ほんと、ご愁傷様」

「死んでないですから。も~」

 いたずらをした後のような笑みを浮かべながら成瀬はベッドから降りると、「洗面所借りま~す」と洗面所へと消えていく。

「あ、そういえば歯ブラシとか予備がないわ。どうしよう」

 ゲーム途中のスマホを置いて成瀬を追うと、成瀬は洗面台で歯ブラシを手にニコッと笑った。

「あ、昨日先輩が眠ってから近くのコンビニで買ってきました。俺って有能でしょ?」

「ちょっ……コンビニ行くぐらいなら帰れ!」

 すぐさま品の欠片もない突っ込みを入れてしまった。
< 29 / 255 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop