一寸の喪女にも五分の愛嬌を
「こんな美味しい物、用意してくれて本当に嬉しい。ワインもありがとう」

「喜んでもらえたなら何よりです」

「でもね、私はあんたの懐事情がわかっているの。だからもう無理はしないで。充分に感謝の気持ちは受け取ったから。もし次にこういうことがあれば、コンビニのシュークリームとかコーヒー一杯で充分なんだからね」

「先輩……」

 一瞬、成瀬の眉根がキュッと寄ったので、気分を害してしまったのかと慌てる。

 一生懸命考え、無理をして用意してくれたのに、いらないなんてニュアンスで傷つけてしまったかと思い、急いで付け加えた。

「その……誤解しないでね。今、すごく嬉しいのよ。それは本当よ。でも……ここまでしてもらうと申し訳ないなって……。でも美味しいし、楽しいし、嬉しい。だから……つまり、ありがとう、感謝してる」

 言った瞬間に、成瀬は手を伸ばして私の手を握り込んだ。

「ちょ!? 成瀬!?」

「先輩、やっぱり俺……改めて先輩のことがすごく気に入ってしまった。俺だけを見て欲しくなった。お願いします、俺と付き合ってください」

「はああ!? どこからどう曲がりくねったら、脳内でそんな結論が出てくるの!?」

「だって俺、先輩みたいな女の子と出会ったことなかった」

「そりゃ、私は半分おやじ入ってるからね、こんな女子はいないでしょうよ」

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