一寸の喪女にも五分の愛嬌を
テーブルの上にはサラダが少しとデザートが残されている。
豪華な食事が終わってしまうのが、ただ寂しく感じてしまう辺り、自分で思っている以上に成瀬といることの心地よさを感じているのかもしれない。
「ねえ、デザートはコーヒー淹れようか?」
「先輩は?」
「私はワインでいいわ。まだ飲みたい気分なの
上品なムース仕立てのデザートは、ワインでも充分にいけそうで、そう答えた私に、成瀬も大きく頷いた。
「俺もそれ賛成。もう少し飲みたいんですよね」
こんな些細なことでも、同意してもらえると嬉しいと、すっかり忘れ去っていた小さな喜びが胸にわき上がる。
私はいそいそとキッチンからワインを持ち出し、成瀬に差し出した。
「数千円の安いワインだけど、結構これ、好きなの。改めて乾杯しよう」
「へえ、これが先輩のお気に入りなんですね。なんか嬉しいな」
ワインを受け取った成瀬は、ラベルを読んでからソムリエナイフで器用にコルク栓を抜く。
「こうやって先輩の好きなのもとか、気に入っているものを知ることができて、俺、マジで嬉しいんですよ」
新しく用意したグラスに注いでくれたワインの赤色が、やけに官能的で私は静かに瞬きをする。