一寸の喪女にも五分の愛嬌を
 新人の彼女には瑞々しさがあり、見ているだけで喪女の私はまぶしさを感じる。

 自分が可愛いことを充分に心得ている絶妙なメイクとヘアスタイル。それを可愛いいじらしさに思ってしまうのは、もうすでに老婆心が芽生えているのかもしれない。

 そんな私の思いとは裏腹に、彼女の瞳は、どこかとても挑戦的で強い敵意を含んでいた。

(なんであんな目をしてるの?)

 人事と総務は近しい仕事をしているだけに、行き来は少なくないけれど、新人の彼女とはほとんど言葉を交わしたこともない。

 彼女たちが研修を受けている時には少しだけ関わったけれど、それ以外では計画書を提出した時の「セミナーの計画書です。課長にお渡し願います」と言ったくらいしか話した覚えはない。

 その時だって「は~い、わかりました~」と甘えたような声でにこやかに受け取ってくれたはずなのに、なぜこんなに敵対するように睨まれているのかさっぱりわからない。

「光元さんですね。計画書の――」

「私は受け取ってません!」

 こちらが全てを言い終える前に、いきなりピシャリと言い放った。

 あまりにも強い言い方に言葉を失ったのは私だけではない。近くで仕事をしていた総務課の人たちも手を止めて顔を上げている。驚いたようだ。
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