一寸の喪女にも五分の愛嬌を
 どうしてこんなに攻撃的になっているのだろうか。

 全くわからないけれど、もしかして、とふと思いつく。

(もしかして……渡した書類、なくしたのかも?)

 私が何かを言う前に、受け取っていないと強く言い放ったということは、私がここに来たのは、文句または確認に来たことだと確信してのことではないだろうか。

 本当に受け取っていないのならば、連絡を受けた私が慌てて提出しに来たと考える方が普通に思えるが、彼女はいきなり喧嘩腰で受け取っていないとの自己主張を始めた。

(うん……そうかもしれない。なくしたのかもね)

 新人の内は、失敗したらどうしていいのかわからなくなり、聞いていないとか、おしえもらっていない、もしくは自分は知らないなど、トラブルから逃げようとすることが多い。

 仕事に慣れてくれば、ミスが起きても対処方法がわかるので、できるだけ早々にミスを認識し、それに対する処理を行う方がずっと効率的だと理解できるのだが、新人の間はどうしてもミスをなかったこと、知らなかったことにしたくなる。

 それは今まで新人研修を見てきて痛いほど実感していることだ。

 どのミスが致命的かどうすればリカバーできるかわからないからこそ、やけに恐ろしくみえてしまうのは仕方ないことだろう。
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