縁〜サイダーと5円玉と君の靴ひも〜
「母さん、今日デート?時間大丈夫なの?」

母には彼氏がいる。

5歳年下の長身イケメン…とはいかず、薄い顔に背もそこそこ。
ただ、笑うとすごく優しくて無邪気な顔をする。


「今日はよっちゃん家に来るのよ」

よっちゃんが母の彼氏。
本名は坂野佳孝らしい。


「よっちゃん、せっかくのデートなのにそんなんでいいの?」

デートにコブ付きってよっちゃんもかわいそうな気が…


「よっちゃんが家に来たいって言うんだもん。わいわいごはん食べるのがいいんだって」


よっちゃんは一人っ子で、共働きの親とはすれ違い生活だったらしく1人で食事することがほとんどだったらしい。


「そうなんだ…」

本人がいいんならいいですけどね。

他が口出しすることじゃございませんし。


「着替えてくる」


2階へと上がる途中、琥珀の部屋から女子の声が…

おいおい、どこの馬の骨かもわからん女を連れ込んでんじゃ…


「あ、違うよ、そこ」

え?

「こっちだって…」


んん?

なんだ、なんだ?
私は吸い寄せられるように琥珀の部屋の前に立つ。


ドアの前に立つと、自動ドアのように開いた。


「盗み聞きとはいい趣味してんじゃねぇか」


琥珀が仁王立ち。


「違うし…」

琥珀を避けながら中を覗くと、莉葉ちゃんがちょこんと座ってテーブルには教科書が広げられていた。


「あ、莉葉ちゃん」

軽く手を振ると、


「お邪魔してます」

と、可愛い声で挨拶してくれた。
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