縁〜サイダーと5円玉と君の靴ひも〜
翌日。

陽色は何事もなかったように、相変わらず机と一体化して教科書を広げている。


「おはよ愛紗ちゃん。今度の日曜一緒に・・・」


愛紗の席に軽そうな男子が寄ってくる。


昨日の出来事が蘇った。

大丈夫かな・・・

愛紗の表情をじっと見る。


「愛紗、また朝から男たらしこんじゃって」

「男も馬鹿だよね、ほんと。なんであんな女がいいんだか」

「愛紗もわかってて一人でいるんじゃん?誘ってんだよ、いつでも声かけてくださいって」


私の席の前の凛子と、凛子の席にやってきた衣織が聞こえよがしに悪口を言い始める。


愛紗、私まで一緒になって言ってるって勘違いしてないかな。

不安になりつつも、衣織の言葉には無反応なまま、私は無言を貫き通すことにした。


「おい、毎日毎日ここに集うな。ここ俺の席だぞ」

声の主は加瀬晴輝。


愛紗の前の席は加瀬晴輝だったんだ。

不機嫌そうな表情で、男子たちを追い払うしぐさ。

今のは愛紗を助けたのだろう。


加瀬晴輝の態度に周りが一気にざわざわし始める。


「ちょっと、まさか晴輝まで?」


「いや、ないでしょ。晴輝はあんな女興味ないって。選びたい放題じゃん」


あり得ない!みたいな顔して、言いたい放題。


加瀬晴輝はみんなのものって感じなのかな?

モテる男はつらいね。晴輝に心の中で話しかける。


凛子と衣織の焦った顔。

その後ろで私は無表情で座っていた。
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