愛しの魔王サマ
「マオさま。これを」
すっと横から現れたアドルフがスマートに差し出してきたのは。
箱。
「クッ、なんたるこの屈辱・・・っ!」
しかし。
皆が待っている。
この俺様の姿を一目見たいと、皆が待っている!
「皆の衆!俺様はここにいる!よく目に焼き付けて帰るのだ!」
箱の上に仁王立ちで立ち、声高々に叫んだ。
広場が歓声に包まれた。
これこそ、俺様が待ち望んだ歓声。
俺様を求める声だ!
満足し振り向くと、アドルフが肩を震わせていた。
「アドルフ」
「・・・はい、魔王さま」
「こういう時だけ、その呼び方をするな!貴様ぁ!」
拳を振り上げアドルフに殴り掛かる。
しかし、ひょいっとよけられその場にべしゃっと転んだ。
「キ、きさま・・・」
「申し訳ございません。つい、反射的によけてしまいました」
手を胸にあて申し訳なさそうに頭を下げる。
「お前なんか、嫌いだ!」