愛しの魔王サマ
それは、俺の記憶がおぼろげな事と何か関係しているのか。
聞いたところで、きっとはぐらかされるだろうと、それ以上追及するのをやめた。
「今は、朝か?」
「・・・はい」
「そうか」
身体を起こすと、ズクンと頭痛がして顔を顰める。
いったい、何が起きているというのか。
アドルフだけではなく、エマにまで何かを隠されている。
そのことに、ただならぬ苛立ちを覚えた。
「・・・風呂に入りたい。チチ、トトに用意させろ」
「私が・・・」
「いい。怪我しているのなら、ジッとしていろ。俺に言えんでも、俺の言う事を聞くことくらいはできるだろう」
「マオさま・・・。わかりました」
八つ当たりだった。
憤りをただ、エマにぶつけただけ。
エマは静かに頭を下げると部屋を出ていった。