愛しの魔王サマ



「エマが、そのままのエマでいられる場所が、エマの幸せのありかなのではないか」

「しかし、エマはここに残ると言っていたではないですか」

「あれは、従順すぎるところがあるからな。契約があるのだから、そう言うだろう」




簡単に、仕事を疎かにするわけがない。
俺への贈りものとしてここに連れてこられ、言われるがままここで働いてきたのだ。

手放すつもりはないと、この俺に言われたのだ。
自分から出ていくことはできないだろう。

あの時は、エマを想って言った言葉だったが、こんな事なら慎重になるべきだったな。



「だから、契約を解消さえすれば、思い残すことはないだろう。アヤツの言う、化け物の側にいるよりはきっといいはずだ」

「マオさまは、優しすぎます」

「優しい?この俺が?ふん、バカなことを言うな。俺は俺の思うままにしているのだ。魔王だからな!」




誰を側に置くも置かんも、俺の思うがまま。
それが、魔王というものだ。


それに、人間と魔物。
きっと、それは相容れないものなのだ。





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