愛しの魔王サマ
「私は、私がマオさまにお仕えしたいのだと、言ってもですか!?」
「しつこいぞ。お前を解雇すると言ったのだ。当面生活できるだけの金は用意する。これまで働いた給金として受け取れ」
「マオさま!」
こんな風に、口答えをするなんて、初めでは考えられなかった。
命令に忠実で、失敗を許さない。
主の命令は絶対だと、自分に言い聞かせている様であったのに。
エマの変化に、心温かく思いながらも。
務めて冷たく言葉を返す。
「途中まで、アドルフに送らせる。出立は3日後だ。それまで、ゆっくりと過ごすといい。仕事の方ももうする必要はない。トマと共にこれからの生活について話し合う事だ」
そう言い残すと視線を手元の書類に落とした。
「話は以上だ。仕事の邪魔だ、出ていってくれ」
「マオさま、私は!」
「姉ちゃん!もういいだろ。あいつだってああ言ってるんだ。これ以上義理立てする必要なんかないじゃん」
「でも!」
「出ていけと言うのが聞こえなかったか?お前はいつの間にそんなに聞き分けが悪くなったのだ」
「・・・っ、マオさま・・・」
傷ついた顔。
ぐ、と拳を握り顔を反らした。