愛しの魔王サマ
「それは、当然です」
自分の中に生まれたモヤモヤしたものをアドルフに打ち明ければ、サラリとそう答えられた。
当然だとまで言われ、俺は怪訝に眉を顰めた。
「どういうことだ」
「一度、出会ってしまったものを、ないものには出来ないと言う事です」
「ないもの・・・」
「マオさまは、もうエマという一人の人間と出会い、関わりを持ってしまったのです。それが、どのようなものであったとしても、その出会い以前のマオさまに戻ることはできませんよ」
エマに出会う以前の俺。
エマに出会う以前の生活。
「いくら忘れようとお思いになったとしても、心は簡単にその日々を忘れることはできません」
「ならば、」
拳を握る。
「ならば、どうすればよかったというのだ」