愛しの魔王サマ
そんな魔王さまを討伐するべく立ち上がったものがいた。
それは、勇者と名乗った人間の男。
伝説の剣と勇敢なる仲間たちを携え、魔王さまに果敢にも挑んできたものたち。
ああ、馬鹿な者がいたものだと。
この者たちは、あの場にいなかったのか。
あの地獄絵図を、見なかったのか。
魔王さまのあの驚異的な力を見たうえで、挑んできているのならただの大ばか者だ。
「これ以上、魔王の好きにはさせない!」
「この世界は、俺たちがこの手で守り抜く!」
滑稽に思えた。
どうせ無理に決まっている。
もうこの世界は終わりだ。
どうすることもできない。
なにもかも、無駄なのだ。
しかし。
苦戦を重ねた結果、その勇者たちはなんと、魔王さまを倒すことに成功したのだ。
完全に倒すことは叶わず、封印という形ではあったが、この世界からとりあえず魔王さまの存在は消えた。
まるで、奇跡を見ている様だった。
奇跡を、成し遂げたのだ。