愛しの魔王サマ
③信じるべきもの
「ですが、・・・そんな私の安心感とは裏腹に、あの日は訪れたのです。マオさまの発作が初めて起こったのは、目覚めて2年半ほどたった頃でした」
アドルフから聞かされた、真実に俺は言葉を失う。
「何度も封じられその力にも耐性ができていたのか、それとも、数千年に及ぶ封印の間に力を溜めていたのか・・・。これまでよりもずいぶん早い現れでした」
発作・・・。
そう言われ、胸がざわつく。
それが、先ほどの状態か・・・。
「・・・あの中身はなんなのだ」
「催眠作用のある注射を・・・。発作が起きるたびにマオさまに施しておりました」
「記憶が時折とんだ気になっていたのは、そういうことか・・・」
ギリッと奥歯を噛みしめた。
アドルフがずっと隠していたこと。
ずっと、俺を苛立たせていたこと。
そのそもそもの原因は、自分にあった。
そのことだけでも、俺にとっては絶望と呼べるものだった。