愛しの魔王サマ
「そうやって、誤魔化してどうするつもりだったのだ」
「・・・っ、ごまかしがいつまでも続かないことくらいはわかっていました。でも!・・・それでも、どうにかマオさまには知られたくなかったのです。そのままどうにか、抑えられたらと・・・」
「はっ、そうだな。・・・どうせ知らせずとも、その化け物とやらが現れればこの俺は消え去るのだろうからな。どっちに転んだとしても、どうでもいいだろうな」
「違います!そうでは・・・っ!」
自分の中に、化け物がいる。
時折感じた、自分が自分ではないような感覚。
自分が何者かわからないと感じていたのは、ああそうか、あながち間違ってはいなかったのか。
「俺の中に眠っているその化け物が、初代魔王だと言うのなら、この俺はいったいなんなのだろうな」
「マオさま・・・?」
俺がこれまで、俺は魔王だ、と声をあげ誇ってきたことはすべて勘違いだったという事か。
俺は、ただの化け物で。
だからこそ、人間もああして魔王は悪だと攻め込んできたのだ。
真実を知れば、それは明らかではないか。
奥底に化けものを飼っている魔王なんて、ただの脅威でしかない。