愛しの魔王サマ
「なぜ、エマを俺のもとに連れてきたのだ」
「そ、それは・・・」
アドルフの事だ、余計なことはしない。
アドルフの言葉を信じるなら、アドルフは俺・・・というよりも魔王のためにことを起こしている。
魔王城に人を寄せ付けないようにしたり、と。
「隠し事は、するなよ」
「・・・数千年の長い封印のせいで、人間界の魔王さまへの恐怖心というものは過去のものへ、語り継がれてはいても、それは未知のものへとなっていったのです・・・」
「・・・」
「そのため、これまで歴代の魔王さまを封じてきた勇者の一族も衰退しておりました。勇者の剣は、魔王城に保管しておりましたが、それを扱える素質のある勇者がいなかったのです」
ポツリポツリと話し始めるアドルフの話は、俺の心を乱していく。
なにを言わんとしているのか、なんとなく、読めてしまった。
「ですが、ようやく勇者の末裔にたどり着いたのです。・・・当の本人は、自分がかつて魔王さまと対峙した勇者の子孫とは知らずに育っていましたが・・・」
「それが、エマだと言うのか・・・」
「・・・はい」