愛しの魔王サマ
ああ、そうか。
エマは、俺への誕生日プレゼントなどではなかったのだ。
エマは、最後の最後、もう手の施しようのなくなった時この俺を過去の勇者のように封じるために与えられたものだった。
「・・・そうか」
だから、俺がエマを返すと言った時、アドルフは渋ったのか。
俺を封じる駒がいなくなるのが困るから。
そういう者を用意する時点で、アドフルは俺が初代魔王に支配されると思っているという事だ。
それはもう、抗えない運命なのだと言われているようなもの。
現に、発作は幾度も起きている。
きっと、この俺のすべてを飲み込むのも、そう遠くない未来にやってくるのかもしれない。
「・・・部屋に戻る」
「は、はい・・・。あの、マオさま」
「しばらく一人にしろ。・・・お前の顔を見たくない」
「マオさま・・・」
苦しそうなアドルフの顔。
そんな顔を見たところで、手を差し伸べる気にはなれなかった。