愛しの魔王サマ
Ⅴ
①襲撃
「あの、マオさま・・・」
「・・・」
躊躇いながら話しかけてくるアドルフの言葉を無視し、通り過ぎる。
結局、アドルフとどう接するべきなのか考えあぐねている。
アドルフの言葉が今までの俺のすべてだった。
アドルフの言葉を信じてこれまでやってきたというのに。
アドルフは、一番大事な俺自身の事をずっと隠して騙してきていたのだ。
それがたとえ、俺のためだとしても。
初めて、本当に付き従いたいと思った――――。
そう言われても、正直あの話をきいた後では、嬉しいと思えるはずもなく。
それでも結局は、俺を封印するためのものを、俺への贈り物として連れてきたアドルフの事が信じられないのだ。
言っていることと行動が矛盾しているように、俺には思えてならなかった。
そんな思いばかりがグルグルと旋回し、アドルフと普通に接することができないまま。
このままでは、ダメだとわかってはいるが・・・。