愛しの魔王サマ


こんな傷は、すぐに塞がる。
しかし、繰り返し起こる発作のたびに血を流し続けているため、貧血気味になっていた。



ようよう部屋に戻ると、扉を閉めた瞬間気が緩みその場に倒れてしまう。
せめてベッドまで行きたかったのに、もうそんな力も残っていない。



ぼやけていく視界に、不安だけが募る。



眠りたくない。
眠って目を覚ました時、“俺”でなかったらどうしようか。




もし、その間にこの身体を乗っ取られてしまったら・・・。






そんな思いに、最近は眠ることもできなくなっていた。
堕ちていく。




呑み込まれていく。





発作が起きるたび、その不安は募っていくばかり。





それでも、抗えず、俺は意識を手放した。





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