愛しの魔王サマ
ドン、ドン!
扉を叩く音にハッとし箱を閉めた。
ふらつく身体をどうにかしゃんとさせ立つと扉へ声をかけた。
「なんだ」
「まおーさま!大変です!人間の襲撃が!」
「・・・何」
トマが率いていた人間たちは、あれ以来何かを仕掛けてくることはなかった。
それは、トマがエマという目的を果たしたからではなかったのか?
エマを返した今、人間たちはいったい何を・・・。
「すぐに、隠れてください!そこまで俺がお連れします!」
「・・・アドルフは」
「え?あ、状況の把握に行くと先に向かってます」
「そうか・・・」
以前なら、状況の把握よりも先に俺の身の安全を確保するのが先だとやってきていたはずなのに。
そんな小さな変化さえ心苦しい。
「別に、逃げも隠れもする必要はない」
「だめです!まおーさまになにかあったら困ります!俺が護るんですから!」
ルカだけは、いつもと変わらず接してくれている。
それはきっと、ルカが何も知らぬからだ。