愛しの魔王サマ


封印する方法、それはえばられし勇者が、魔剣と呼ばれる剣を持ち魔王の心の臓の中心に魔剣を突き刺すというもの。
そして、その勇者というのは、ただの人間ではなく、人間と魔物の間に生まれた人間と魔物の血を受け継ぐ者の事を言うのだという。




「人間と・・・魔物の・・・」




かつての人間はそれを知り、一人の女性を犠牲にし魔物との間に子をもうけさせたのだという。
凶悪な魔王を倒すための犠牲・・・。



そんな犠牲の元に行われていたことだったのか・・・?




そのために、代々その勇者の家系が魔王の討伐に駆り出されていっている・・・。
魔物の血は薄くなっていっているが、少しでもその血の中に魔物の血が残っていれば封印の儀は執り行えるらしい。



だから、アドルフはエマを・・・。
エマの中にも、魔物の血が・・・。

エマも、かつての俺の犠牲の上に生まれた存在というわけか。




ギリ、と唇を噛んで読み進めた。




そして、次の章には、魔王を封印ではなく完全に消滅する方法と題打ってあった。




「完全に、消滅・・・」




それは、俺のこの身体もろとも消え去るという事か。
もう目覚めることはなく、二度とこの世に立つことはできないという事。



そもそも、封印されればすべての記憶は消え失せるのだ。
どちらにしても、俺にとっては同じこと。


ならば・・・。




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