愛しの魔王サマ
「でも、聞いた話によるとね、今まで姿を現したことのない魔王が姿を現したらしいの!」
「え!?それって、大丈夫だったの?」
「それが、無抵抗で斬りつけられてたって・・・」
「無抵抗?それって、本当の話?」
「結局は手下たちに蹴散らされて、とどめが刺せたかはわからないみたいだけど、結構な傷を負わせたって、自慢してたわよ」
ガタガタッと、音を立て立ち上がったエマ。
信じられない話に、身体が震え。
思わず、見ず知らずのその人たちに詰め寄っていた。
「そ、その話、本当ですか!?ケガを負わせたって、どれくらい・・・」
「え、な、なに・・・?わ、私も聞いた話だから詳しくは・・・。でも、結構な傷だって話よ・・・。でも、化け物なんでしょ?簡単には死なないって言うじゃない。恐ろしい話よね」
女の人は、勢いに押されながらもそう答えた。
青ざめたエマは、紅茶が来るのを待たず、その場を飛び出した。
「姉ちゃん!」
そんなエマに、トマが呼びかけた声にも、とまることはなかった。