愛しの魔王サマ


無垢で素直なお前らに、きっと俺は今まで何度も救われた。
無条件で好きだと言ってくれること。

うっとおしく思っていたことも確かだが、嬉しかったのも確かだ。


俺自身を、認められた気がしたから。



「もう、決めたことだ。すぐにでもこの城から出ていけ。半日だけやる。その後姿を見たときは、無理やりにでも追い出すぞ」

「・・・なんで、なんで・・・まおーさま・・・」

「マオさま、いくらなんでも・・・」

「アドルフ、お前はもうしばらく、共にいてもらう」

「え・・・、そ、それはもちろんです・・・。ですが」

「話は終わりだ。俺は休む。言った通りにしておけ」





俺はそう告げると頭から布団をかぶった。
眠りたくはなかった。
眠れば、アイツが出てきそうな気がして。


そんな不安は尽きない。
覚悟を決めたつもりでも、やはり自分が自分でなくなるというのは、恐ろしいものだ。




・・・覚悟を、決めなければ。
この手ですべてを終わらせる覚悟。

なにも、アイツの手になどさせてやるものか。



俺は、俺の大切なものを、この手で護るのだ。





・・・俺は、魔王なのだから。




< 205 / 293 >

この作品をシェア

pagetop