愛しの魔王サマ
無垢で素直なお前らに、きっと俺は今まで何度も救われた。
無条件で好きだと言ってくれること。
うっとおしく思っていたことも確かだが、嬉しかったのも確かだ。
俺自身を、認められた気がしたから。
「もう、決めたことだ。すぐにでもこの城から出ていけ。半日だけやる。その後姿を見たときは、無理やりにでも追い出すぞ」
「・・・なんで、なんで・・・まおーさま・・・」
「マオさま、いくらなんでも・・・」
「アドルフ、お前はもうしばらく、共にいてもらう」
「え・・・、そ、それはもちろんです・・・。ですが」
「話は終わりだ。俺は休む。言った通りにしておけ」
俺はそう告げると頭から布団をかぶった。
眠りたくはなかった。
眠れば、アイツが出てきそうな気がして。
そんな不安は尽きない。
覚悟を決めたつもりでも、やはり自分が自分でなくなるというのは、恐ろしいものだ。
・・・覚悟を、決めなければ。
この手ですべてを終わらせる覚悟。
なにも、アイツの手になどさせてやるものか。
俺は、俺の大切なものを、この手で護るのだ。
・・・俺は、魔王なのだから。