愛しの魔王サマ


戸惑いながら、中に入れると、久しぶりに会うエマは本当に人が変わったかのように豊かな表情に変わっていた。
それでも、醸し出される雰囲気は、俺のよく知るエマそのもので懐かしさに少しホッとしてしまう。



「なにをしに来た」

「マオさまが、怪我をされたと聞いて・・・」



人間界でも噂となっていたのか。
それに胸を痛めてくれたというのか。

そんな風に、人を思いやる気持ちが芽生えているとは・・・。
本当に、人とは変わるものだ。

いや、もともとがそういう性格だったのだろうな。
それが、生きていく境遇の中で押しつぶされ抑制され、俺の前に現れたあのエマこそが歪められた姿だったってわけか。




「大事ない」

「そう・・・ですか・・・。安心いたしました」

「そうか。ならさっさと人間界に戻れ」



エマに会うのは本意ではない。
本来ならもう、会う気などなかった。


本当なら、エマではなく・・・。





「いやです。私は、マオさまの側にいたいんです。だから、戻ってきました」

「っ!?なにを言ってる。お前はもう解雇した。俺にはもう必要ない」

「それでも、私が側にいたいんです!マオさまを、お慕いしているのです!」




< 209 / 293 >

この作品をシェア

pagetop