愛しの魔王サマ


「しっかりしろ。誰も殴ったりなどしない。そもそも俺は、怒ってなどいないし、失敗したとも思っていない」

「え・・・」

「なにに怯えているのか知らんが。しっかりと、俺を見ろ」



そう告げると、怯えた瞳が次第と落ち着いてくるのがわかった。
俺は小さく息を吐くとすっかり湯冷めしてしまった体の水滴をさっさと吹き上げ、着替えを済ませた。

まったく、変な女を拾ったもんだ。




「ま、魔王さま・・・」

「なんだ」

「申し訳ございません。取り乱してしまって・・・」

「別に気にしてない」




まぁ。
コイツにも感情的になることがあるってことが分かっただけ十分か。

まるで人形のようなものだったもんな。




「お前は、そもそもなんなのだ?ルカのようにライカンスロープではないな。獣耳もないし。牙もないから吸血鬼の類でもない」



なんとも弱々しい見た目。
いや、逆に魔力が強いからそれほどまでに完璧な人型なのか?




「あ、あの・・・」

「なんだ?」

「私は、・・・人間です」

「そうか、にん・・・はあ!?人間だと!?」




俺は、声をあげエマを見た。
戸惑ったような瞳で俺を見る。

に、人間だと・・・?





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