愛しの魔王サマ
「お、降ろせっ!」
って、悠長にしてる場合じゃない。
もしかして、さっき追いかけてきた魔物の仲間かも知れない。
これは、まさしく、捕獲されて持ち帰られてる途中だとしたら。
「おろ・・・っ、あだぁ!!?!」
暴れた瞬間、足首に激痛が走る。
いや、足首だけじゃないからだ中に鈍い痛みが・・・。
そういえば、俺崖から落ちたんだ・・・。
「だから大人しくしていろと言っただろうが。馬鹿者」
「な、大人しくなんかしとけるわけないだろ!どういうつもりだ!おれを食うのか!」
「・・・お前なんぞ食ってどうする。怪我をしている様だったので連れ帰って手当てでもしてやろうとだな・・・」
「手当・・・?」
そんなわけ。
なんで俺にそんなことする必要がある。
絶対裏があるに決まってる。
「冗談じゃない。騙されないぞ!」
「・・・俺の名はマオ。この魔界の王だ」
「・・・・・・・は?」
「目覚めたのはつい最近だが、俺が魔王だとアドルフが言った。だから、俺は偉いのだ。刃向うことは許さんぞ」
魔界の、王?
魔王?
は?
このちっこいのが?
魔王なんているなんて話聞いたことない。
いや・・・そういえば、数千年ぶりに目覚めたと、魔物たちが噂してるのを耳にしたような・・・。