愛しの魔王サマ
「そんな事を、俺様に問うのか?それ程、お前らはお前らの言う“マオさま”の事を知らなかったのだな」
はっきりとそう言われ、言葉をのんだ。
その通りだと思った。
マオさま、マオさま、と慕っていただけで、マオの本当の心まで見抜けていなかった。
なにを想い、何に悩み、なにに苦しんでいたのか。
気づくことができなかったのだから。
「だから、知りたいんです。マオさまの事、ちゃんと知っておきたいんです」
「くくっ」
「あなたに聞くのは筋違いだと言うのもわかっています。それでも、たとえ間違っていても、そこまでしてでも知りたい。だから、教えてください」
「俺に教えてなんの利がある?」
「それは・・・」
簡単に教えてくれるはずもない。
そんな事はわかってはいた。
しかし、渡せるものなどなにもない。
「まあいい。どうせ“マオ”はもういない。お前らも、俺の力が戻れば終わりだ。別に渋る理由もないな」
そういうと魔王は楽しそうに笑った。