愛しの魔王サマ
姿形は、マオのそれなのに、口調も性格もすべてが違う。
そこにマオはもういないのだと。
慕うべき存在は、いなくなってしまったのだと、改めて痛感する。
それが酷く悲しい。
「お前らを護りたいんだと。大切なものができた。それを護るには、封印では生温い」
「え・・・」
「そもそも、封印したところで、目覚めた時にはまた別の魂になっている。ならば、消滅して消えるのも封印して消えるのもあいつにとっては同じだった。ならば、この先誰にも迷惑をかけないように消滅させてしまおう」
「・・・っ、」
「バカな野郎だよな。どうせどっちにしろ消えるんだからよ。さっさと俺様に身体を引き渡せばいいんだ。どうせ、俺様には勝てないんだからな」
聞かされた話はなんて残酷で、マオの優しさに溢れた想いだろうか。
エマは泣いてしまわないように体中に力を込めて、キッと魔王を睨みつけた。
「私たちの大切なマオさまをバカにしないで!マオさまは、誰よりも魔王さまに相応しいお方!あなたなんかよりずっと!」
「なんとでもいえ。あいつはもう消えたんだ」