愛しの魔王サマ
「おはようございます。マオさま」
「ああ」
昨日の朝のいざこざなど、まるでなかったかのような態度。
そんなものはいつもの事だ。
アドルフは焦ったり、躊躇ったりすることはない。
「マオさま、本日のご予定ですが」
「わかっている。視察だろう」
「はい。朝食後すぐにでも出立いたしますよう」
「ああ。そのつもりだ」
この視察になんの意味があるのか。
それでも、俺がこの城にやってきて毎月行っている。
「ルカも、同行すると騒いでおりました」
「んぐ、あいつも来るのか!?」
口に運んでいたパンを詰まらせそうになる。
慌てて水で流し込んだ。
「なんでも、マオさまが不足しているそうで」
「なんだそれは」
「最近、かまってあげていないのでしょう」
「あいつは俺のなんなのだ。いちいち構う必要がどこにある」
一気にうんざりした気分になった。