愛しの魔王サマ


これまでの魔王さまと何が違うのか。
魔王さまに言わせれば、同じ魂から生まれたひとかけらの魂だと言うのに。




――アドルフ!アドルフはどこだ!




――なんですか、マオさま。そのようなお姿で、みっともない

――うるさい!俺は、今日は泡ぶろの気分だと言っていただろう!

――ええ。ですから、泡ぶろの用意をいたしました




俺様で気が強く。
いつだって背伸びして威張っていたマオさま。




――俺は、オレンジの香りがよかったんだ!柑橘系の気分だったのに!




とても愛らしく、憎めないお方だった。





――・・・マオではなく、魔王さまと呼べといつも言ってるだろう



マオさまとの恒例のやり取りは、とても楽しかった。
マオさまはいつも、嫌そうに顔を顰めておられたっけ。





そんなどれもが愛おしい思い出です。
もっとマオさまのお側にいたかった。
マオさまの側近として、もっと何かできたんではないかと。



一度だけでもいいから、“魔王サマ”とお呼びすればよかった。





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