愛しの魔王サマ


どうか。
どうかと。


目を覚まさないでくれ。
そう願いながら様子を見た。




「・・・・・・体中が、痛い」




ポツリと、聞こえた声。
それは魔王の身体からで。




「ここは、どこだ・・・」




紡がれるその声は、マオのもの。
でも、あの魔王が覚醒しても声はそのままであったと、警戒を解けずにいた。




「・・・なんだ、誰もいないのか?アドルフ・・・、おい」





でも。
紡がれるその口調と声色は紛れもなくマオのもので。



ああ、夢ならば。




夢ならば、醒めないでほしいと。




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