愛しの魔王サマ
Ⅷ
①奇跡と呼ぶのなら・・・
目を覚ますと、どんよりとした魔界の空が見えた。
なぜこんなところにいる。
記憶が、あいまいで、不安定だ。
身体を動かそうにも、どうにも動かせそうにはなく体中を鈍い痛みが駆け巡っている。
なにが起きた?
「・・・体中が痛い」
思わずついて出た言葉。
声は出るようだ。
しかし、誰の反応も返ってこない。
身体がいたく顔を動かすことすらできなかった。
「・・・なんだ、誰もいないのか?アドルフ・・・、おい」
不自由な状況に苛立ちながら声を荒げた。
人の気配はするのだ。
誰かがいることくらい、わかっている。
「マオ・・・さま・・・?」
聞こえてきたのは、アドルフの声ではなく女の声・・・。
その声は・・・。
「・・・なんだ、エマか?お前、いたのか」
なぜここにいるのだ?
エマは、追い返したはずでは?
いや、そういえば戻って来たのだったか。
なんだ、記憶が混沌としている。