愛しの魔王サマ
「いえ・・・。すみません・・・。私がマオさまから目を反らし、・・・避けてばかりいたからですよね」
アドルフの声が弱々しくなる。
それほどまでに、苦しめてしまったのか。
「いや・・・。俺が、逃げたのだ。お前らから。いろんな現実に押しつぶされ、苦しくなって・・・。疑心暗鬼になった・・・」
「マオさま・・・」
「だが・・・。そうだな。ちゃんと話しておけばよかった・・・。ならば、そんなにもお前たちを泣かせることもなかったのだな」
俺のためにこんなにも泣いてくれる者がいる。
それがどれほど嬉しいことか。
「だが、消滅の儀・・・、エマ、お前がしたのか?」
「・・・はい。私が。他の誰にもマオさまの事を傷つけてほしくなかったので・・・」
「俺は・・・、消滅の儀をするのに、お前を使うつもりはなかった」
それなのに・・・。
なぜお前が・・・?
「どういう事ですか?では、どうするおつもりで・・・?」
「トマに任せるつもりだった。あいつはエマと血を分けた兄弟だ。あいつにも資格はあるはずだ」
「あ・・・、その事、念頭にありませんでした・・・」
アドルフがハッとしたように言った。