愛しの魔王サマ


「ああ。・・・愛するものだ」

「・・・っ」

「エマ、お前の事を、愛している」




そんな感情があることすら知らなかった。
だが、エマに言われそういう感情を調べると、自分が抱いている感情も同じなのだとわかったのだ。


ああ、これが愛なのだと。
人を愛する気持ちなのだと。



「マオさま・・・、私も、私も、マオさまを・・・心から、愛しております」

「ああ、知っている。俺を目覚めさせてくれたのは、お前だからな」

「・・・っはい!」




エマは嬉しそうに笑いながら涙を流す。
なんと器用な事か。

そして、表情が豊かであることに嬉しく思う。




「お前の涙すら嬉しいとはな」

「マオさま・・・。私は、世界一幸せ者です。マオさまのような素敵なお方に愛されて、お側にいられるのですから」

「大げさだ。いい男などどこにでもいるであろう」

「いいえ、いいえ。マオさまのようなお方は他におりません!」




エマの盲目的な愛に苦笑しながらも、何にも関心も執着心も持たなかったエマの想いに安心感とそれを向けられているのが自分だと言う充足感を感じる。



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