愛しの魔王サマ
「おい、来てやったぞ。トロル」
森の奥へ進みそう叫ぶ。
大きなものが動く気配がすると、そこに、毛むくじゃらの巨体が現れた。
北の森の奥に棲む魔物、トロルだ。
「おおマオか・・・よくきたな」
「どうだ、何か変わったことはあったか」
「いや・・・。皆よくしてくれる。ここいらに棲む魔物たちは、気のいい奴ばかりさ」
「そうか」
穏やかなゆったりとした口調でそう言うと、トロルは大きな音を立てそこに座った。
「凶暴で、手の付けられなかったと噂のお前が、こんなにもふぬけた魔物だったとはな」
「ふぉっふぉっふぉ。それはずいぶん昔の事さね。わしももう年を取った」
「隠居するにはまだ早いのではないか?」
魔物の寿命はそれぞれだが、簡単に死ぬようなものではない。
俺は、凶悪だったころのトロルを知る由もないが、それがすっかり牙を抜かれたジジイになっているとは変な話だ。
「マオ。お前の封印が解けどれ程経った」
「・・・3年だが。それがどうかしたか」