愛しの魔王サマ
「魔王と呼ばれるから、魔王なのか。それとも、だからこそ、魔王と呼ばれるのか」
「・・・」
「マオが魔王であることは事実。だが、そのどちらかで、大きく違う」
「意味が解らん」
「わからなければ、同じことを繰り返すだけの事」
同じこと――――?
「トロル殿!」
「わしは少し疲れた。もう寝る。マオ、気を付けて帰るのだぞ」
トロルはゆっくりと向きを変え森の奥へと消えて行った。
少しずつ遠くなる大きな足音。
聞こえなくなって俺はようやく動き出した。
「城に帰る」
「・・・は」
アドルフが眉間にしわを寄せ目を伏せた。
珍しく黙っていたルカは、戸惑ったようにアドルフと俺をきょろきょろと見比べ、躊躇いながら俺の後ろに突き進んだ。
エマは、なんの興味もないように相変わらず無表情のままだ。