愛しの魔王サマ
俺は魔王だ
俺は魔王だ
自室の隅に置いてある小さな扉のついた箱。
そこを開いて中を見つめる。
そこには、大きな紙が雑多に張り巡らされている。
『俺は魔王だ』
そう書きなぐった紙が。
「・・・俺は、魔王だ。魔王は、俺だ・・・」
言い聞かせるように何度もつぶやく。
「俺は、誰だ・・・誰だ・・・」
お前は、誰だ。
ズクン、鈍い痛みが頭に走る。
顔を顰め、扉を叩きつけるように閉めた。
「マオさま・・・?」
部屋の扉が開き、アドルフが顔を出す。
箱の前で呆然と座り込む俺を見つけたアドルフは、慌てたように駆け寄った。
「マオさま!」
添えられた手を、俺は思い切り払いのけた。
「触るな!触るな!・・・誰なんだ・・・わからない・・・俺は・・・俺は・・・」