愛しの魔王サマ


  俺は魔王だ




    俺は魔王だ





自室の隅に置いてある小さな扉のついた箱。
そこを開いて中を見つめる。


そこには、大きな紙が雑多に張り巡らされている。



『俺は魔王だ』



そう書きなぐった紙が。




「・・・俺は、魔王だ。魔王は、俺だ・・・」



言い聞かせるように何度もつぶやく。





「俺は、誰だ・・・誰だ・・・」




お前は、誰だ。





ズクン、鈍い痛みが頭に走る。
顔を顰め、扉を叩きつけるように閉めた。




「マオさま・・・?」



部屋の扉が開き、アドルフが顔を出す。
箱の前で呆然と座り込む俺を見つけたアドルフは、慌てたように駆け寄った。



「マオさま!」




添えられた手を、俺は思い切り払いのけた。




「触るな!触るな!・・・誰なんだ・・・わからない・・・俺は・・・俺は・・・」





< 33 / 293 >

この作品をシェア

pagetop