愛しの魔王サマ
「おはようございます、マオさま」
「・・・マオではなく、魔王さまと呼べといつも言ってるだろう」
「はい、マオさま」
朝風呂を済ませ食堂に向かうと、恭しくアドルフが迎える。
ギロリと視線を移しそのまま椅子に座った。
「今日は、視察の日だったか」
「・・・いえ、マオさま。視察は昨日でございます」
「昨日・・・?」
「はい」
昨日・・・。
頭の中でもう一度繰り返す。
昨日は・・・。
エマが朝初めて起こしに来て。
食堂でアドルフとひと悶着があって・・・。
違うのか?
「昨日は、お疲れのようですから、記憶があいまいなのでしょう」
「・・・あいまい・・・?」
あいまい、ではなくそんな記憶すらない。
でも、俺は確かに視察に行った・・・のか。
「エマ。俺は昨日・・・」
「魔王さまは、視察に行かれました。私も同行いたしました」
「・・・そうか」