愛しの魔王サマ
「お前には、俺が何者に見える」
「・・・魔王さまです」
はっきりとそう告げられる。
まぁ、そうだろうな。
俺は苦笑を浮かべ視線を空にうつした。
「お前は、人間か?」
「――――はい」
「なぜ、自分が人間だとわかる」
「・・・人間の親から生まれたからです」
「生まれた時を、覚えているのか」
「覚えてはいませんが、育ててくれたのは、人間の両親です。それに、姿形も人間と同じです」
ならば。
ならば俺は。
「ならば俺は、どうすれば、自分が魔王で魔族だと確信できるのだろうな」
呟いた想いはため息とともに消える。
「トロルさまも言っておられました。魔王と呼ばれるから、魔王なのか。それとも、だからこそ、魔王と呼ばれるのか、と。そのことで、悩まれているのですか?」
「・・・は?」
トロル、だと・・・?
昨日視察に行ったという・・・。
そんな事を、話したのか?