愛しの魔王サマ


「お前には、俺が何者に見える」

「・・・魔王さまです」


はっきりとそう告げられる。
まぁ、そうだろうな。
俺は苦笑を浮かべ視線を空にうつした。



「お前は、人間か?」

「――――はい」

「なぜ、自分が人間だとわかる」

「・・・人間の親から生まれたからです」

「生まれた時を、覚えているのか」

「覚えてはいませんが、育ててくれたのは、人間の両親です。それに、姿形も人間と同じです」




ならば。
ならば俺は。



「ならば俺は、どうすれば、自分が魔王で魔族だと確信できるのだろうな」





呟いた想いはため息とともに消える。




「トロルさまも言っておられました。魔王と呼ばれるから、魔王なのか。それとも、だからこそ、魔王と呼ばれるのか、と。そのことで、悩まれているのですか?」

「・・・は?」



トロル、だと・・・?
昨日視察に行ったという・・・。
そんな事を、話したのか?



< 39 / 293 >

この作品をシェア

pagetop