愛しの魔王サマ
それは確かに、この男にはいろいろと借りはある。
数千年前に封印されたらしい俺様を呼び戻したのはこの男だ。
封印を解き、この城に住まわせここまで来れたのは、この男の技量だとも言えよう。
しかし。
だからと言って、主従関係というのはあるわけで。
アドルフがさも、俺の上にいるようなこの感じは、全く持って気に入らん!
「アドルフ。三回まわってわんと言ってみろ」
「風邪を召されますよ、マオさま」
「いいから。三回まわってワンだ」
アドルフははぁ、と息を吐くと手でぶりをつけ一瞬にして三回転する。
「わん」
何のためらいもなく、そうやってのけた。
「お前なんか、嫌いだ!」
俺はそう言い残すと走り去るように風呂場に戻った。
あいつが焦った顔というのは一度も見たことがない。
くそ。
俺様はまだ成長途中。
今にあいつの背を抜いて、見下ろしてやる!